「靴ひも」 ドメニコ・スタルノーネ
久しぶりのイタリアの小説。
ウンベルト・エーコー以来かもしれない。
この小説は3章で構成されていて、それぞれ語り手が異なる。
1つの家族の歴史というか変遷なのだけれど、1章は怒りや悲しみが嵐のように吹き荒れているので、読んでいて気が滅入ってくる。
2章はミステリーのような側面と1章を補う独白、3章は1〜2章が与えた影響と種明かし、といったところだろうか。
大団円でもないし、登場人物の誰にも共感できないのだけれど、それでいて靴の中の小石みたいなひっかかりを覚える。
タイトルの『靴ひも』は日本語だと文字通り靴の紐でそれが物語の重要な鍵となっているけれど、イタリア語では“縛る” “結わえる” “絆”という意味も内包しているらしい。
登場人物全員が家族に縛れられ、離れ、引き戻される。
家族というものは良い意味でも悪い意味でも、絶大な力を持っている。
特に別れることのできない親子は、悪い方に走れば悲劇にしかならない。
親が子供を損なうとどういうことになるか、私には子供はいないし持つ予定もないけれど、少し怖くなった。