「あの素晴らしき七年」 エトガル・ケレット
彼の息子が生まれた年から、彼の父親が亡くなる7年分が収められている。
勉強不足でイスラエルについての知識があまりなかった。
なのでテロや戦争がすぐ身近にあったり、両親はホロコーストの生存者、兵役中彼が目を離した隙に鬱病だった親友が自殺、身内の宗教問題…などその一つを背負うだけでも苦しい彼の生活に驚きつつ、その中でも常にユーモアを失わず飄々としている様子にもっと驚かされる。
だがその諧謔はそういった厳しい環境を生き抜くために彼の中に培われたのではないだろうか。
映画『ライフ・イズ・ビューティフル』のように。(この映画の主人公もユダヤ系だ)
日本に住む日本人である私にとってもその少し悲しくて寂しいユーモアは必要なものだ。
だからだろうか、住む世界は違っても根底にあるものは共通していると感じるのは。
彼の作品が世界各国で翻訳されていることにも頷ける。
少し前に小説「クレネルのサマーキャンプ」を読んでいたが、このエッセイのほうが読みやすかった。
1編が5ページ未満のショートショートなのでとっつきやすいのも良い。
小説はここに奇想天外成分が加わるので、人を選ぶと思う。