「法廷遊戯」 五十嵐律人
書評で褒められていたので読んでみたこの『法廷遊戯』。
なんていうか、うん、微妙。
ミステリ小説の肝であるトリックがどーのこーのではない。
なんていうか登場人物が全員うすっぺらいのだ。
能力高めの主人公、幼馴染で影のある美少女ヒロイン、そして主人公の才能をかってはいるが本人はそれを凌駕する能力も持ち主などなど、人物造形がライトノベルなの?と疑うレベル。
でもまぁそれはいい。ミステリに個性的な人物がいるのはよくある。(いすぎるのはやめてほしいが)
問題なのは人間関係、特に物語の核となる主人公とヒロインの関係に深みがないことだ。
もっと言うと、ストーリーも作者の頭の中だけでこねくりまわしたものだと感じる。
作者の主張したいテーマ(免罪と無罪の違いとか)について、読者が物語に乗って違和感なく受け取るのが理想なのに、訳知り顔の登場人物たちの意味深ありげな会話に乗せて披露されるので、作者の脳内会話を傍で聞かされているように感じて興ざめする。
また伏線の張り方も稚拙。
例えば鍵となるホームレスの男性が「俺を探したければ〜」などと親切にも言い残してくれたりする。
バカでなければ「あ、この人を探す場面が後であるんだろうなぁ」と察する。
ホームレスで思い出したが、見張っているにも関わらずヒロインの部屋に怪文書が入れられるシーンがあるが、これもアホじゃなければどうやって入れたか見抜けてしまう。
ていうか一番最初にその可能性考えるよね? 主人公賢い設定だよね??
ほかにも本筋とは関係のないところで助けた人物が力になってくれるなど、ご都合主義も目に余る。
さらにキーパーソンに見せてそうでもなかった人物までいる。
あえてそうしているのでもなら文句はないが、物語の進行上必要なければさっさと消え、言葉で簡単にその後が説明される。
もう少しそこ掘り下げてもいいんじゃないの?
あと従業員どうするの?
投げっぱなし要素が多すぎる。
と、散々悪口を書いておいてなんだが、無辜ゲームのくだりなど法律に精通している作者(司法試験に合格しているらしい)ならではの視点があり、そこはとても興味深く読めた。
次作はもう少し登場人物をキャラクターではなく、人として描いてもらいたい。