「かがみの孤城」 辻村深月
発売されたのが2017年の7月なので3年以上経って、ようやく読むことができた本書。
図書館に入ってきた当時は予約待ちが100人以上出ていた。
私の近所の図書館では10冊までしか予約ができない(そしてその枠はいつも目一杯使っている)ので、その時は諦めたがこの前ふと見ると待ち人数が0だったので、借りることにした。
2018年の本屋大賞1位にも選ばれたらしいので期待も高まる。
あらすじとしては、ある出来事があり学校へ行けなくなった中学1年生のこころ。
ある日自室の鏡が光りだし、潜り込むとその先にはお城があった。
そこにはこころを含めて7人の中学生いた。
この7人を集め、また城の主でもある狼の面を付けた少女“オオカミさん”は言う。
「3月30日までに城の中にある願いの部屋とその部屋の鍵を探しだした者の願いをなんでも叶えてやる」と。
ここから先は既読の方、もしくはネタバレOKの方のみどうぞ。
この物語には伏線がかなりの数仕込まれている。
それらのうちのいくつかは下記のために用意されたものだ。
1.7人は同じ中学に通えないという共通点があるが年代はバラバラ
2.“オオカミさん”の正体はレオンの姉
3.喜多嶋先生はアキである
私の場合、1についてはすぐに分かった。
作中何度もヒントが出てくるので、大半の人は種明かしされる前に気づくだろう。
それだけに登場人物たちが真相を見抜けないことに違和感を覚える。
マサムネが自分がやっていたゲームのように、みんなの世界は枝分かれした並行世界(パラレルワールド)ではないかと言い出すが、そんなことより来た年代が違うという結論のほうを早く思いつくのではないだろうか。
その辺りに作者都合が垣間見えて、どうもなぁと首を傾げてしまった。
続いて2。
これもリオンの姉にまつわる記憶をこころが読み取ったときに、きっとそうなんだろうなと予想できた。
しかしその場面は物語のかなり終盤。
それ以前の伏線はハワイに留学中のリオンに姉は日本にいるということのみ。
なにか事情がありそうな雰囲気はあったが、姉は実はもっと前に亡くなっていたことは前記のシーンまで明かされないため、姉=オオカミさんであることを先に見抜いた人はすごく勘が良い。
最後に3。
これは最後の最後まで見抜けなかった。
ヒントはアキとスバルが喜多嶋先生に会ったことがない、ということぐらいか。
そのほかにも、スバルの将来の職業や私が気づいていない伏線がまだまだあるのかもしれない。
だが私の感想としては、1はヒント過多、2・3は極小という偏り具合に、フェアじゃなさを感じてしまう。
純粋なミステリーじゃないから、と言われれば、それまでなんだけども。
物語としては面白かったし、私が10〜20代前半くらいならもっと楽しめたかもしれない。
ただ私が昔考えていたことを思い出すきっかけにはなった。
それは子供が学校で過ごす時間や生活を、大人目線でこの世界のほんの一部にすぎないとあしらわないこと。
大人になった今は学校以外にも居場所はあるよと簡単に言えるけれど、私だって中学生の頃は学校の中の世界が全てで、その世界での失敗=人生が終わったレベルの絶望を感じもした。
もし自分の近くにいる子供たちが悩んでいるようなことがあれば、親身になってあげられるようその感覚は失いたくないと思う。