2020年の個人的ベスト3
明けましておめでとうございます。
2021年ですか、早いものですね。
昨年の初めに2020年の目標として“本を100冊読む”というのがあったのですが、残念ながら73冊で終了。
私は寒い時期はよく読むのですが、暑くなるにつれ減っていくのが傾向にあり、今年もそれが顕著でした。
さて、今年の目標は、冊数ではなく中身を充実させたい!
いわゆる文学作品の間に、ミステリーや文学・作家論を読むのが私のスタイルなのですが、世界的名作といわれている作品をまだまだ読み残していることに恐怖を覚える今日この頃なのです。
昔は本屋さんに行くとわくわくしたのですが、今はそれに加えてまだこんなにも読んでない本がある…と絶望的な気持ちもわいてくるのです。
いつ死ぬか分からないし、年齢を重ねて視力に問題が出る前にもっと読みたい!
とはいえ、ミステリーなども好きなので、ある程度読んじゃうだろうけれど。
では忘れる前に2020年の個人ベストを記録しておきます。
すべて私が2020年に出会ったものなので発売日などはバラバラです。
【本】 ※再読本は含みません
やはりダントツで面白かった。
流れるような流麗な文章に身をまかせて、どこまでもゆるゆる流れていける。
あとわりと俗っぽいストーリーも楽しい。
今年は何巻まで読めるかな…。
今さらもいいとこですが実は初読。
電車の中で読んでて涙が出たのには焦りました。
児童文学の傑作ですが、大人が読んでも充分楽しめます。
3位「雪の階」 奥泉光
奥泉さんお得意の文学とミステリーの融合。
文学としては三島由紀夫の『春の雪』、ミステリーは松本清張の『点と線』を下敷きにしていると思われます。
正直そのどちらにも及ばないが、この小説にはそこからまた別の魅力を生み出している。特にヒロインの造詣は秀逸。
まったくの余談ですが、ヒロインの父がなぜか島田雅彦氏の顔に設定されてしまい、そのキャラクターが潔いほどの小物で途中で申し訳なくなった。
【音楽】
1位「街を泳いで」 YONA YONA WEEKENDERS
もともとシティポップ系の曲が好きなのですが、Spotifyを導入したのを機に出会ったバンド。
夜にお酒を飲みながら聴くのが最高。
2位「H&A」岩井俊二
映画『花とアリス』のサントラ。サントラも好きなジャンル。
好きな映画のものは買ってよく聴ききます。
この映画も音楽が印象的だったのに購入していなかったので、Spotifyにあるのを見つけたときには嬉しかった。
3位「Guess Who」 Nulbarich
サブカル好きにはたまらない!
特に「NEW ERA」はヘビロテしました。
レコードも欲しいけれど、ちょっと高くなっているので検討中。
別枠「RUN] Sexy Zone
今年は10周年イヤーなので飛躍の年になると思います。楽しみ。
マリウスのお帰りも待ってるよ〜。
【映像】
1位「窮鼠はチーズの夢を見る」
私の好きな行定監督が帰ってきた!!
詳しくは去年の感想をどうぞ。
英国紳士ほんとかっこいい。
ちょっとエグいのもイギリスっぽい。
今年上映予定の第3作にも期待。
3位「DARK」
NETFLIXのドイツドラマ。
まだシーズン1を見終わったところですが、相関図と人物表がないと混乱必至。
期待もこめてのランクイン!
新年から長々と書き連ねました。
今年も良い作品にひとつでも多く出会えることを願って!
それでは本年もよろしくお願いいたします。
「メインテーマは殺人」 アンソニー・ホロヴィッツ
同じ作者の『カササギ事件』がおもしろかったので図書館で予約したのはいいが、忘れた頃にようやく順番が回ってきた。
最寄りの図書館は長期休館に入る前は通常より貸出期間が長くなる。
そこでこの本以外にも数冊まとめて借りてきた。
まずはそちらを片付けてから、こちらは年末年始の休み中にゆっくり読もう、と思っていたのだが誘惑に勝てず、ついつい先に手が伸びてしまった。
『カササギ事件』には大きな仕掛けがあったので、本作ももしかしたら…と警戒していたのだが、結論から言うとそんなものはなかった。
代わりに小さな仕掛けがところどころにあって、最終的にうまく回収される。
その手際が見事だ。
本作はワトソン役に作者と同名の人物が配されている。
職業も同じ作家・脚本家で、作者と同じようにホームズの続編を書いたり、作者が実際に携わっている実在のテレビドラマの裏側が語られたりもする。
そのほかにも実在の有名人がそのまま出演したりと、まるで現実と地続きの世界のようだ。
だが、ここで気をつけなければいけないのは、モデルにしているのは間違いないにしても、小説に出てくるホロヴィッツがイコールでこの本の作者ではないし地続きの世界でもない、ということだ。
(ワトソン役に作者と同名の人物をもってくるのは、有栖川有栖ぐらいしか心当たりがないのだが、そのアリスくんがどんな人物だったか数作読んだはずなのにとんと思い出せない)
ミステリーを書く上でワトソン役は読者より少しバカでなければならない、とどこかで読んだ記憶があるのだが、たしかにそういう書かれ方をしているものは多い。
読んでいて「なんでそんなことも分からないだ!こいつは!」と言いたくなることはよくある。
さらに腹立たしいのはホームズ役が「実は〜」などとこちらが喝破していたことを得々と語りだした日には噴飯ものである。
しかし本作には、その心配はない。
作者がモデルと思わしき人物は暗愚なワトソンではなく、我々が推理した事柄(例;あいつとあの人は裏で繋がってる?)を終盤まで待たずにホームズ役にぶつけてくれる。
ワトソン=私となる箇所が多々あるのだ。
そうしたワトソン(私)の推理をホームズ役に論破される。
ここにこの小説独特の面白味があると思う。
このホームズいやホーソーンがかなり嫌なやつなので、否定されたときは本当に悔しい。
しかもフェアだ。
結末に至る伏線はきちんとアンテナに引っかかるレベルで書き込まれている。
だが他の魅力的な伏線に惑わされ、すぐにその糸口を見失い、見当違いな方向に誘導される。
してやられた!
というわけで続編の『その裁きは死』もすぐに予約することにしたけれど、まだ当分回って来そうにはない。
「ノッキンオン・ロックドドア 1&2」 青崎有吾
行きつけの本屋さんでおすすめされていた1冊。
偶然図書館で見かけたので、借りてみた。
ドアノブのない、つまり来客は絶対にその扉をノックすることになる探偵事務所『ノッキンオン・ロックドドア』。
そこには探偵がふたり。
事件の真相を動機や理由から追求する〈不可解〉専門の肩無氷雨と、トリック解明〈不可能〉を担当する御殿場倒理が、お互いの不得意分野を補い合いながら事件を解決していく。
上記の設定だけでも分かるように、ラノベ感満載だ。
表紙の時点で本格トリックではないだろうなぁ、と思ってはいたが。
ふたりに協力するクールな女性警部補(駄菓子好き)は大学の同級生で、この小説でモリアーティーを務める男もまた同じゼミに所属、そして当時4人全員が関係する事件があったらしい、ということが徐々に明かされ、2巻目の最後でその謎が解き明かされる。
仰々しく引っ張ったわりに、心理描写の甘い結末にモヤモヤ。
モリアーティー役も『PSYCHO−PASS』の槙島の足元にも及ばない小物ぶり。
1、2通して最も面白かっったのは1に収録されている『十円玉が少なすぎる』。
まぁこれもオマージュ元である『9マイルは遠すぎる』を知らなければの話。
やはり本家に比べるとかなり落ちるし、結末も大きく見たら同じじゃないですか。
そこは一捻り何か加えるのがオリジナルに対する礼儀なのでは?
『ロックドドア』とタイトルにあるのだから、もう少し密室トリックを頑張ってほしかったな。
キャラは立っているので、ドラマやアニメ化はありだと思う。
実写化の配役を考えてみたけれど、氷雨は神木隆之介くん、御殿場は綾野剛さんでいかがでしょうか??
「直筆の漱石 発見された文豪のお宝」 川島幸希
大型書店の作家論コーナーに行くと、夏目漱石関連本の多さに毎度驚く。
それほどまでに漱石は愛されている。
何を隠そう私もそのひとり。
どのくらい好きかというと、新潮文庫で集めていたのに、注釈などが充実している岩波文庫に買い換えるぐらいだ。
なかでもいちばん好きなのは『行人』。
漱石作品の中ではわりとマイナーである。
だからといって通ぶりたいわけでもないし、なんなら最も優れているのは『こころ』だとも思っている。
ではなぜ『行人』なのか…は別の機会に。
この『直筆の漱石』は作者によって収集された、漱石の反古原稿(その裏の落書き)や友人知人に贈ったサイン入りの献本などから、漱石研究に新たな光を当てている。
それだけなく全集未収録の新資料まで発見している!
漱石に関しては研究され尽くしているといっても過言ではないし、まだ出ていない資料を探し出すのはほぼ不可能に近いのではないか、と思うのだが作者によるとまだどこかに眠っているだろうとのことだ。
経験者だけに説得力があるし、親切にも探す方法まで教えてくれる。
それにしても作者の漱石に対する知識と造詣の深さ(ネットオークションなどでこれは未発見資料ではないかとすぐに察知することができるレベル)には脱帽である。
そして本書を読んで私が最も驚いたのは、近代文学研究者があまり資料を重視していないという指摘である。(風向きは幾分変わりつつはあるらしいが)
捨てた原稿から推敲のあとをたどられたり、友人に宛てたハガキから○年○月○日に何をしていたかまで調べられるのは、漱石からすれば困ったものかもしれないが、私はとても面白く読めた。
今後もっと資料に準拠した漱石研究がなされること、また作者による新たな新資料発見に期待したい。
「NOT FOUND」 Sexy Zone
Sexy Zoneの19thシングル。
特典やカップリング曲が異なる3形態で販売されている。
この1つ前に発売された『RUN』は名曲だった。
メンバーも自分たちの新たなシンボル曲として認識していたらしい。
これまでのSexy Zoneの代表曲といえばデビュー曲『Sexy Zone 』だった。
時代を創ろう Sexy Zone
と無邪気に歌っていたデビュー曲。
しかし現実は甘くはない。
世間は彼らが求めるレベルで認めてはくれない。
デビュー10周年をもうすぐ迎えるという段階で、この1曲しか世間に認知されていないという状況は焦るべきだ。
そんな時、彼らは『RUN』に出会った。
心地良い疾走感の中に焦りや不安を内包したこの曲は、伸び悩むグループとしての立ち位置や休養中のメンバーを思いやる中で、Sexy Zoneとしての現段階の全てをさらけ出す1曲となった。
終わらないだろう? 終われないだろう? 僕らは何も残せていない
思っていたほどの結果が残せていない。
後輩グループも台頭し始めている。
彼らは歌うたびに自分たちの立ち位置を再認識させられたに違いない。
中島健人のドラマタイアップも功を奏して売上も順調に伸び、先日放送された「ベストアーティスト2020」のジャニーズシャッフルで彼らの曲の中から選ばれたのは『RUN』だった。
この瞬間『RUN』は文句なしに自他ともに認める彼らの代表曲となった。
随分前置きが長くなってしまったが、ようやく本題の『NOT FOUND』について語りたい。
本音を言うと最初聴いた時、いまいちパッとしない曲だと思った。
『RUN』があまりにも良すぎた弊害だ。
歌詞の内容も“現状に満足できない足掻き”で前作と似通っている。
だがこれこそが今彼らが表現したい最たるものだと受けとめたい。
シングル2作を費やしてまで必死に訴えたいほどに。
あるいは前作に参加できなかった松島聡を加えて改めて宣言したのだ。
僕らが選んだ時代に宣戦布告だ
彼らにとって時代は“創る”ものから、理想通りにいかなかったとしても“選ぶ”ものへと変化した。
だが私はこれを敗北とはとらない。
なぜなら彼らは今でも時代を創ることを諦めずに、虎視眈々と狙っているからだ。
“物足りない” “満たされない” “叶えたい”が力強く繰り返される。
彼らはまだ本当の自分たちの実力を充分に示せていない。
そしてタイトル「見つからない」。
見つかっていない、見つけられたい、見つけてほしい。
痛切な叫びは私達の胸を突く。
正直にいうと、現状で彼らがSMAPや嵐のような国民的アイドルになるのは難しい。
何かが足りない。
けれども私見だが、その“何か”が手に入るまで、あともう少しのところまで来ているように感じる。
『RUN』『松島聡の復帰』という大きな上昇気流に乗るだけでなく、自ら切り開いてどんどん大きく羽ばたいてほしい。
それまで私 はSexy Zone を応援していく。
「法廷遊戯」 五十嵐律人
書評で褒められていたので読んでみたこの『法廷遊戯』。
なんていうか、うん、微妙。
ミステリ小説の肝であるトリックがどーのこーのではない。
なんていうか登場人物が全員うすっぺらいのだ。
能力高めの主人公、幼馴染で影のある美少女ヒロイン、そして主人公の才能をかってはいるが本人はそれを凌駕する能力も持ち主などなど、人物造形がライトノベルなの?と疑うレベル。
でもまぁそれはいい。ミステリに個性的な人物がいるのはよくある。(いすぎるのはやめてほしいが)
問題なのは人間関係、特に物語の核となる主人公とヒロインの関係に深みがないことだ。
もっと言うと、ストーリーも作者の頭の中だけでこねくりまわしたものだと感じる。
作者の主張したいテーマ(免罪と無罪の違いとか)について、読者が物語に乗って違和感なく受け取るのが理想なのに、訳知り顔の登場人物たちの意味深ありげな会話に乗せて披露されるので、作者の脳内会話を傍で聞かされているように感じて興ざめする。
また伏線の張り方も稚拙。
例えば鍵となるホームレスの男性が「俺を探したければ〜」などと親切にも言い残してくれたりする。
バカでなければ「あ、この人を探す場面が後であるんだろうなぁ」と察する。
ホームレスで思い出したが、見張っているにも関わらずヒロインの部屋に怪文書が入れられるシーンがあるが、これもアホじゃなければどうやって入れたか見抜けてしまう。
ていうか一番最初にその可能性考えるよね? 主人公賢い設定だよね??
ほかにも本筋とは関係のないところで助けた人物が力になってくれるなど、ご都合主義も目に余る。
さらにキーパーソンに見せてそうでもなかった人物までいる。
あえてそうしているのでもなら文句はないが、物語の進行上必要なければさっさと消え、言葉で簡単にその後が説明される。
もう少しそこ掘り下げてもいいんじゃないの?
あと従業員どうするの?
投げっぱなし要素が多すぎる。
と、散々悪口を書いておいてなんだが、無辜ゲームのくだりなど法律に精通している作者(司法試験に合格しているらしい)ならではの視点があり、そこはとても興味深く読めた。
次作はもう少し登場人物をキャラクターではなく、人として描いてもらいたい。
「LOVE」 菅田将暉
私が『まちがいさがし』に出会ったのは、去年の大晦日、紅白歌合戦でのことだ。
流し見していたところ、白に近い金髪を逆立て、だらっとした大きめのニットを着た菅田くんが登場した。
俳優が歌うことに偏見があった(今でもある)私は、「これ私服なんかな?」と余計なことを考えていたし、ちゃんと聴く気もなかったように記憶している。
そんな私の隙きを突くように、菅田くんは力強く歌った。
度肝を抜かれたと言っても過言ではない。
なんだこれ。
めっちゃいい歌じゃないか。
歌詞もグサグサと刺さる。
実を言えば、この曲が使われていたドラマを私は見ていた。
ということは、毎週この曲を聴いていたのだ。
にも関わらず、その瞬間までこんな名曲だったとは気づきもしなかった。
完全に感性が鈍っている。
この曲をつくった米津さんが自身のアルバムでカバーされているのを聴いたけれど、菅田くんの時のような感動はなかった。
米津さんは抜群に上手い。
声にのせた感情が非常に細やかで、聴くたびにうまいなぁ、と感じる。
けれどもこの曲に限っては、菅田くんのてらいのない愚直なまでのまっすぐさが私の心に響いたのだ。
『まちがいさがし』がとても良かったので、アルバムも聴いてみた。
その中で『まちがいさがし』に負けず劣らず気に入ったのが『7.1oz』。
“oz(オンス)”とは重さの単位で、歌詞に出てくるTシャツであれば7.1ozのものはかなり分厚めの生地らしい。
この歌のすごいところは、その“みみっちさ”である。
こんな“みみっちい”感情を歌ったラブソングを私は他に知らない。
要は、付き合っている彼女が自分に遠慮しているので寂しい、ということらしい。
自分をTシャツに例えて汚れていたら遠慮なく洗ってくれーー!と訴える、ただそれだけの歌である。
けれどもこの“みみっちさ”が妙に心を打つのだ。
この曲は『忘れらんねえよ』とバンドの柴田から提供されたとのこと。
この曲に限らず、菅田くんは誰かに曲を作ってもらうとき、自分が提供者のファンでその音楽性が好きというのを前提にしているのか、どれもすごく楽しそうだ。
それがほかの俳優の歌手活動と一線を画している理由なのかもしれない。